ホームお知らせ・ブログ > 「滅相もございません」と「とんでもございません」

お知らせ・ブログ

「滅相もございません」と「とんでもございません」

ブログ

こんにちは。
スタッフのすみれです。

過ごしやすい季節になったからでしょうか、急に本が読みたくなりました。
本屋さんに立ち寄ると、東野圭吾の『マスカレード・ナイト』が文庫化されていました!
長澤まさみ&木村拓哉のコンビで大ヒットした映画『マスカレード・ホテル』のシリーズ第3弾です。

今回もホテルに現れる犯人を待つというメインストーリーに、
様々な訳あり宿泊客が出してくるご無体な要望が「これでもかっ!!」というくらい絡んできます。

その中で、潜入捜査のために再びフロント係に変装したキムタク演じる新田刑事が
コンシェルジュに抜擢された長澤まさみ演じる山岸尚美に「敬語の間違い」を指摘される場面がありました。
キムタクと長澤まさみをイメージして、引用をお読みください。


以下、引用
  「何しろ久しぶりですからね。勘が鈍っていないか心配です。気づいた点があれば、遠慮なくいってください」
  「そうですか。では早速」尚美はカウンターの電話を指した。「今、お客様と話しておられましたね」
  (中略)
  「(中略)電話を切る少し前、何とおっしゃいました?」
  えっ、と戸惑ったように新田は目を丸くした。
  「滅相もございませんーー」尚美は首を横に振った。「そんな言い方はありません。滅相もない、で一つの言葉ですから、
  正しくは、滅相もないことでございます、となります。
  それからその前に、プールを御利用になられる場合は、とおっしゃいましたけど、二重敬語になっています。
  プールを利用される場合は、あるいは、プールを御利用になる場合は、が正解です」
  (中略)
  「やっぱり相変わらずの敏腕ホテルウーマンだ」
  「それは皮肉でしょうか」
  「とんでもござい……おっと、これも要注意の言葉だ。敬語にする時は、とんでもないことでございます、でしたね。
  前回、あなたから教わりました」
  「とんでもございません、は最近許されるそうです。私は意地でも使いませんけど」
      (『マスカレード・ナイト』東野圭吾 集英社文庫 より)


「滅相もございません」がなぜ間違いかというと、
「滅相もない」で一つの形容詞のため、「滅相」と「ない」に分けて「滅相」と「ございません」というように
敬語表現にすることはできません。丁寧に言い換えるならば「滅相もないことです」や「滅相もないことでございます」になります。

また、「とんでもございません」にも同じことが言えます。
「とんでもない」も一つの形容詞ですので「とんでも」と「ない」を分けて「とんでも」と「ございません」というように
敬語表現にすることは正しくないという考えもあります。間違いのない表現としては「とんでもないことです」や
「とんでもないことでございます」となります。
ただ、コンシェルジュの山岸尚美の台詞にあるように、2007年に文化庁が発表した「敬語の指針」において、「相手からの褒めや賞賛などを軽く打ち消すときの表現であり、現在では、こうした状況で使うことは問題がないと考えられる。」と記されています。


敬語は、日本語を学習する学生さんも頭を悩ます単元です。
教える側がしっかりと理解しておく必要があります。

前へ戻る